●まえがき
 
 今回、静岡県浜松市に拠点を置く、「ショップナインプロダクション」さんのご厚意で、フェラーリの長期インプレッションのための車両を、貸し出し年数不問にて、長期リースしてもらうこととなった。
 
 貸し出しが許可されたモデルは次の通り。
 
 '88年式 328GTB シャーシーNo. ZFFXA19JAP0078*** 貸出時走行距離 12,648Km
 
  ここで言う「リース」とは、小市民が一生のうちでフェラーリ を所有できる期間は限られているとの考えのもと、ゆくゆくは購入したショップに返す日が来るであろうから、その日まで大きい事故もなく、またその日が来た ら、胸を張って嫁に出したい、との決意の現れである。つまり、(購入金額−売却金額)こそ、まさしく「リース代金」ということである。従って、該当ショッ プへ「本当にリースしてくれるのか」との質問は、迷惑であるのでぜひともやめてもらいたい。いわばこれはジョークである。
 
 
 
●328の生い立ち
 
 308シリーズはフェラーリ始まって以来のヒットとなったが、 それは彼らにとって別の問題を浮き彫りにすることとなった。308は量産を前提に設計されたものであったが、時は空前のバブル経済で、フェラーリの市場は にわかに拡大していた。彼らは早急に、エントリーモデルであるV8フェラーリの、さらなる量産性の向上に挑まなければならなかった。
 
●エクステリア
 
 エクステリアは、基本的に前のモデルである308を踏襲してい る。これは、当時まだ308が市場において好評を博しており、大幅な変更によるカスタマーの拒否反応を恐れたためだ。但し、明らかに前近代的になりつつ あったウェッジシェイプはなりを潜め、12気筒のテスタロッサと共通のイメージを持つフロントグリルが与えられた。
 
 それでもこのフロント部分のデザインは、後発のF355などの ように空気を積極的に車体底部に流し、一種の真空状態を作り出してダウンフォースを得ようとするようなものではなく、基本的にはリップスポイラーはスカー ト状になっていて、空気が車体底部に入るのを妨げるような構造のものである。
 
 ご覧の通り、テスト車は日本仕様とい うことで、いわゆる308時代で言うところのUS出っ歯となっている。このフロントバンパーは、実はEU向けとUS向けでは内部の素材も構造も違ってお り、それによってUS向けはかなりの重量増となっている。308の時代には外観も一見して違っていたので、それを嫌ってEU仕様に変更されたものが数多く 存在する。
 
 但し、328になってからは、比較的その差が少なくなったの で、わざわざコストをかけてまで変更しようという人は減っている、というか、キットが存在しないのかもしれない(笑)。後部も、US向けはEU向けに比べ て、下部のパネルの黒いスリットが入った部分に、触媒に押されて後ろに後退したサイレンサーが収まることとなり、後方に突き出している。
 
●エンジン
 
 エンジンはクワトロバルボーレ用のF105Aをボア・ストロー ク共にアップし、排気量は2,926ccから3,185ccとなり、名称はF105Cとなった。また、圧縮比も9.2:1から9.8:1へと若干のアップ を果たした。これによって、最高出力はクワトロバルボーレの240HP/7000r.p.mから270HP/7000r.p.mへ、最大トルクは 26.5Kg/5000r.p.mから31.0Kg/5500r.p.mへと向上した。
 
 なお、308のF106エンジンから、どうして型式が古くなったのかという疑問をときどき耳にするが、開発中のプログラムのうち、後から始まったものが前から行っていたものを追い越すことはよくあることだ。
 
   
 初めてレポート車と対面したとき、ショップのオーナーが「エンジンも見 ますか?」とエンジン内部を見せてくれた。「どうです?」とオーナー。実は、質問の意味が分からず、また、それまで長期レポート車として運用していた 911(930type)の、エンジンだけ台に乗せても十分鑑賞しうるあの美しいデザインのボクサーエンジンや、348以降の、直接F1を連想させられ る、見られることを意識した縦置きエンジンに比べて、この308に始まって328まで続いた横置きV8エンジンは、なんとも華がないと思っていたレポー ターは(328は、それでもインダクションボックスが赤く塗られているが……)、「それこそ、見て楽しいエンジンじゃないですね」と、上記のような考えを まくし立てた(なめられちゃイケナイ。意見を言っとこうという判断も働いた 笑)。すると黙って私の意見を聞き終えたオーナーは、「エンジン、キレイで しょ?」と一言。引き渡すに当たって洗浄したのか、それとも最初からキレイだったのか、コンディションがまずまずだということを、私に伝えたかったらしの だ(笑)。
 
 「何台フェラーリを見てきたか知らんが、エンジンルームを見せた途端に、こちらの意も汲めないような奴に、預けて大丈夫なのだろうか?」と、オーナーが苦虫を噛みつぶしたような顔でテスト車を引き渡したのは言うまでもない。
 
 なお、現在はテストから時が経っているので、そんなにエンジン ルームもキレイではない。また、フェラーリの工場をラインオフしたときにはあったはずの、エンジンルーム内に貼ってあったであろうプレートが何枚かない。 ひょっとしたらぶつかって部品が交換されたとき、忘れられてなくなっちゃたのかも……(笑)。
 
 
 
 エンジンかけるときの動画はこちら
 
 
 
 
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